不倫相手とのトラブルを解決する際、示談書や合意書に「二度と配偶者や家族に接触しない」という接触禁止条項を設けることは一般的です。しかし、約束を交わしたにもかかわらず、相手が連絡をしてきたり、接触を試みたりすることがあります。
約束が破られたとき、どのような対応が取れるのか、違約金は実際に請求できるのかと不安を抱く方も多いのではないでしょうか。接触禁止条項の効果を高めるためには、禁止行為の範囲を具体的に定め、実効性のある違約金や条件を設定しておくことが大切です。この記事では、接触禁止条項に違反された場合の扱いや、トラブルを防ぐための条項作成の注意点、万が一の際に備える証拠の残し方について分かりやすく整理して解説します。
接触禁止条項で禁止する行為を具体化する
接触禁止条項を作成する際、「二度と接触しないこと」という抽象的な文言だけにしてしまうと、どのような行動が違反に該当するのかで後から争いが生じる原因になります。トラブルを未然に防ぐためには、禁止対象となる具体的な行為を網羅して記載することが重要です。
曖昧な表現を避けて具体的な連絡手段を指定する
接触の手段は時代とともに多角化しています。直接会うことだけでなく、電話、電子メール、LINEなどのメッセージアプリ、手紙の送付など、考えられる連絡手段を一つひとつ明記する必要があります。
また、着信を残すだけの行為や、SNSでのダイレクトメッセージ、投稿へのコメント、ゲームアプリ内のチャット機能など、見落としがちなツールについても触れておくと安心です。「直接・間接を問わず、あらゆる手段による連絡や接近を禁じる」といった包括的な表現と併せて、代表的な手段を具体的に並べておくと、解釈のずれを防ぎやすくなります。
友人やSNSを通じた間接的な接触も禁止対象に含める
不倫相手が直接本人に連絡を取ることを避けていても、共通の知人や友人を通じて伝言を頼んだり、配偶者のSNSアカウントを監視・巡回したりするケースもあります。このような間接的なアプローチも精神的な負担となるため、禁止行為に含めておくべきです。
第三者を介した連絡の打診や、SNSでの不適切な言及・つきまとい行為(ストーカー行為に準ずる閲覧やリアクション)も明確に禁止することで、相手に対して圧力を与え、安易なアプローチを思いとどまらせる効果が期待できます。
職場や子どもを通じた接触をどう扱うか
不倫相手と配偶者が同じ職場に勤めている場合や、地域社会・子どもの関係で顔を合わせざるを得ない環境にある場合、完全に接触を絶つことが物理的に難しいケースがあります。このような事情があるときは、現実的な運用ルールを定めておく必要があります。
同じ職場や取引先で顔を合わせる場合の例外ルール
同じ職場で働いている場合、業務上の必要な会話まで一律に禁止してしまうと、相手が「示談を守ることが不可能だ」として合意自体を拒否する恐れがあります。そのため、「業務上不可欠な範囲における最小限の会話や連絡を除き、私的な接触を一切禁止する」といった例外規定を置くのが現実的です。
可能であれば、部署異動や配置転換を求める申し入れを行うか、業務上の連絡であってもメールなどの記録が残る形に限定する取り決めを交わすと、私的な接触へと発展するリスクを大幅に減らすことができます。
子どもや親族を介した接触を防ぐための取り決め
不倫相手が家族や子どもの立ち寄り先、学校付近に現れたり、親族を通じて連絡を試みたりする事態も絶対に避けなければなりません。条項には、本人だけでなく、配偶者の家族や子ども、親族に対する接触や接近も同様に禁止する旨を記載しておきます。
自宅周辺や最寄り駅、子どもの通学路などを徘徊する行為も禁止対象であることを示しておくことで、家族全体の安全と精神的な平穏を守る境界線を明確に引くことができます。
違約金の金額と請求条件を明確にする
接触禁止条項の実効性を高めるために、違反した場合の損害賠償額(違約金)をあらかじめ定めておく「損害賠償額の予定」がよく用いられます。ただし、設定する金額や条件が不適切だと、法的に無効と判断されるリスクもあります。
社会通念上認められる違約金の相場と過大請求のリスク
違約金の金額は、高ければ高いほど効果があるように思えるかもしれません。しかし、数千万円や数億円といったあまりに高額すぎる金額を設定すると、公序良俗に反するとして裁判で無効と判断される可能性があります。
一般的に、接触禁止違反に対する違約金の額は、1回あたり数万円から数十万円、悪質な継続・接近の場合でも100万円から300万円程度が妥当な範囲とされています。相手の負担能力や不倫問題全体の解決状況を考慮し、法的に認められやすい客観的な水準で設定することが重要です。
1回あたりの金額や支払い手続きを明記する
違約金を定める際は、「1回の違反につき○○万円を支払う」というように、違反回数や態様に応じた具体的な金額を記載します。また、違反が発覚してから何日以内に、どの口座へ振り込むべきかという支払い手続きまで規定しておくと、実際に請求を行う際の交渉がスムーズになります。
あわせて、違約金を支払ったとしても、なお接触を止める義務は免れないこと(買い取りのような形にさせないこと)を書き添えておくことも忘れてはなりません。
違反を確認したときに残したい証拠
万が一、相手が接触禁止条項に違反したと思われる行動をとった場合、違約金を請求したり法的な措置を講じたりするには、違反の事実を客観的に証明できる証拠が必要です。
着信履歴・メッセージ・SNS画面の正確な保存方法
相手からの連絡があった場合は、感情的になってすぐに削除せず、記録として確実に残しておきます。携帯電話の着信履歴画面、着信日時、送信されたメッセージの本文や画像などは、スマートフォン上でスクリーショットを撮影して保存します。
画面保存の際は、相手の電話番号やアカウント名、送信された年月日と時刻がはっきりと確認できるように撮影することが大切です。また、留守番電話の音声データや届いた手紙・封筒なども、現物のまま大切に保管しておきます。
第三者の目撃証言や現場の記録を保全する
もし自宅周辺や職場付近で直接待ち伏せされたり、話しかけられたりした場合は、その日時、場所、相手の言動、その場の状況を細かくメモに残しておきます。防犯カメラの映像や、同席していた第三者の証言が得られる状況であれば、それらも貴重な記録となります。
自身で問い詰めて相手と言い争いになると、新たなトラブルに発展する危険もあります。静かに証拠を保全し、客観的な事実に基づいて冷静に対応を進めることが大切です。
まとめ
不倫相手とのトラブルを終結させ、平穏な日常を取り戻すために、接触禁止条項は大きな役割を果たします。
条項を設ける際は、禁止する行為の範囲を具体的に特定し、職場や子どもの関係など個別の事情に応じた例外やルールを盛り込むことが成功のカギとなります。また、違約金を設定する際は過大な金額を避け、実現可能な範囲で請求条件を明確にしておくことが求められます。
万が一、約束が破られて接触が行われた場合は、慌てず冷静に証拠を集め、記録を保存してください。ご自身だけで違反金の請求や交渉を進めることに不安がある場合は、無理をせず弁護士などの専門家に相談しながら、適切な手続きを踏んで解決を目指していきましょう。
参考情報
- 裁判所「民事調停手続き・民事訴訟手続き」
- 法テラス(日本司法支援センター)「不倫・慰謝料に関するご相談」
- 日本弁護士連合会「示談書・契約書の作成について」
注意事項
※この記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の法律上の判断や手続きの結果を保証するものではありません。具体的な示談内容の作成や違約金請求については、弁護士などの専門家へご相談ください。


