外出を禁じられ6年。密室の暴力から逃れ自身の人生を取り戻すまで

外出を禁じられた家で腕を抱え、不安な表情を浮かべる女性と背後の夫を描いたモノクロ漫画イラスト

人が強い苦しみの中に長くい続けると、そこから逃げることではなく、苦しみに慣れることを覚えてしまうことがあります。
本来なら許されるはずのない言葉や行動も、毎日繰り返されるうちに「当たり前」へと変わってしまうのです。
自分自身でさえ、何が正常で何が異常なのか分からなくなっていく恐怖。
結婚して8年になる一人の女性も、そんな見えない檻の中で息を潜めるように生きてきました。

目次

閉ざされた家の中の現実

周囲から見れば、ごく普通の夫婦だったのかもしれません。
しかし、彼女が送っていた日常は、常に誰かの顔色をうかがい、自分の意思を持つことすら許されないものでした。

結婚生活が8年を迎える中で、彼女の体にはいくつもの痣が残されていました。
夫からの暴力が始まったのは、今から5、6年前のことだと言います。
最初は些細な意見の食い違いだったのかもしれません。
暴力は少しずつエスカレートし、彼女の日常を支配していきました。

自分の実家のご両親にも、その事実を打ち明けることはできませんでした。
お父さんとお母さんから見れば、夫は「普通に良い人」であり、娘を大切にしてくれていると信じられていたからです。
彼女自身も、波風を立てたくないという思いや、恐怖から声を上げることをためらっていたのかもしれません。
自分が我慢すればいいと、心のどこかで思い込んでいた部分もあったと言います。

助けを求めた代償

暴力が日常化する中で、彼女も決して抵抗を諦めていたわけではありません。
勇気ある行動が、かえって彼女をより深い恐怖へと追い詰める結果になってしまいました。

今から3年前、彼女は一度だけ警察へ相談に行きました。
これ以上耐えられないという、限界のサインだったのだと思います。
警察署から出てくるところを、夫の知り合いに見られてしまいました。
その出来事を境に、夫の暴力はさらに激しさを増していきました。

「二度と行くか」と、強い力で頬を殴られました。
腫れが引くまでは家の中から絶対に出るなと命じられ、彼女の自由は完全に奪われました。
部屋の中で少し着替えようとしたり、お風呂に入ろうとしたりして動くだけで、ドアの音が鳴れば夫が足音を立ててやって来ました。
「どこ行くんや」と問い詰められ、家の中で軟禁されているような状態が続きました。

真実が明かされる話し合い

恐怖に支配された生活から抜け出すため、彼女はついに第三者へ支援を求めました。
ご両親も交えた話し合いの場が設けられることになります。

支援団体のサポートを受け、彼女は診断書や暴力を振るわれている際の音声データを証拠として集めました。
その証拠を前にしても、話し合いの席についた夫は「家庭内での意見の衝突」「大したことない」と繰り返しました。
痣についても「勝手に転んだ」「少し肩を掴んだだけ」と、自分の行動を正当化する言葉が続きます。
話し合いの最中でさえ、支援者に対して声を荒らげ、暴れるような素振りを見せました。

その場には、何も知らされていなかった彼女のご両親も同席していました。
結婚の挨拶の際、「娘さんを守ります」と誓ったはずの義理の息子。
その彼が、実際には娘を傷つけ、言葉を奪っていたという現実に、ご両親は大きなショックを受けました。
「猫を被るのが得意な、ちゃんとしている人だと思っていた」というお母さんの言葉には、見抜けなかったことへの後悔が滲んでいました。

恐怖を越えて選んだ道

長年抑え込んできた感情が、ご両親の涙を前にしてついに溢れ出します。
彼女は、ずっと心の奥に閉じ込めていた言葉を口にしました。

「今日だってお父さんとお母さんに、こんなに悲しい、つらい思いをさせて」。
彼女は涙ながらに、自分が悪いのだと思い込み、「こんな私なくなればいいのに」とずっと自分を責め続けていたことを打ち明けました。
支援者からの励ましや、ご両親の愛情に触れたことで、彼女の心に明確な意思が芽生えます。
もう二度と、大切な家族に悲しい思いをさせたくない。

彼女は、夫に向かってはっきりと「今すぐ私と離婚してください」と告げました。
「もう二度と、私と私の家族に近づかないでください」と強い拒絶の意思を示しました。
警察への告訴も辞さないという毅然とした態度の前に、夫もついに離婚に同意せざるを得ませんでした。

取り戻した穏やかな日々

話し合いの後、彼女はご実家へと戻りました。
長かった恐怖の時間は終わりを告げ、彼女の新しい生活が始まります。

その後、正式に離婚が成立しました。
夫には長年の悪質な行為に対する超高額な慰謝料が一括で請求され、彼は多額の借入れをして支払いに応じたそうです。
一切の接触を断つための接近禁止や違約金を定めた公正証書も作成されました。
元夫は周囲に真実が広まったことで職場を追われ、人が離れていき、現在は一人で借金返済のために働いていると言います。

彼女は今、ご実家で少しずつ安心できる時間を取り戻しています。
毎日何かに怯えながら生活しなくていいという当たり前のことが、どれほど尊いかを感じているのかもしれません。
初めて相談した時は、自分がその状況から抜け出せるとは思っていませんでした。
支援者への感謝の言葉とともに、彼女は「これからは自分自身の人生を取り戻すために、前を向いて歩いていこうと思う」と語っています。

失われた時間が戻ってくることはありません。
心や体につけられた傷が、すぐに消えることもないのかもしれません。
苦しみの中で耐え続けた日々も、勇気を出して一歩を踏み出した日も、すべてがこれからの人生へと繋がっていきます。
あの日が、恐怖から逃げ切れた日ではなく、自分自身の人生を取り戻した最初の日となったこと。
人が自分の生活を少しずつ立て直していく確かな歩みは、彼女自身の力で切り開かれたものです。

DV・モラハラについて、もう少し詳しく知りたい方へ

安全の確保、証拠の残し方、相談先、離婚準備、慰謝料、養育費、親権、子どもへの影響、心の回復など、状況に合わせて読める記事をまとめています。

この記事を書いた人

フタリエ編集部は、不倫・浮気、托卵、DV・モラハラ、恋愛心理を中心に、恋愛・夫婦・家族の体験談と実用情報を発信しています。

一つの価値観や結論を押し付けず、読者が自分に合った選択肢を考えるための、誠実で分かりやすい記事づくりを心がけています。

目次