不倫慰謝料を分割払いで合意するときに決めたい支払条件と滞納対策

昔ながらの喫茶店でショートヘアの女性がノートを前に、慰謝料の分割条件と滞納対策を考える場面

配偶者の不倫相手や配偶者との間で不倫慰謝料の金額がまとまったものの、「一括では支払えないので分割払いにしてほしい」と求められるケースは少なくありません。まとまった現金がない相手の場合、分割払いを受け入れざるを得ない局面もありますが、分割払いは途中で不払いや連絡不通になるリスクを伴います。

分割払いを認める際は、口約束で終わらせず、不払いを防ぐための明確な支払条件を定め、法的な効力を持つ書面として残しておくことが極めて重要です。この記事では、不倫慰謝料の分割払いに合意するメリットとリスクを整理したうえで、取り決めるべき具体条件、滞納が発生した際の対策、公正証書の作成方法について詳しく解説します。最後まで確実に回収するための判断材料としてお役立てください。

目次

不倫慰謝料を分割払いにするメリットとリスク

不倫被害を受けた際、慰謝料を一括で支払ってもらうのが理想ですが、相手に十分な預貯金がない場合、分割払いを提案されることは少なくありません。分割払いには交渉をスムーズに進めるメリットがある一方で、長期間にわたる不払いのリスクも潜んでいます。

相手の資力不足に対応し合意を成立させやすくなる

相手が一括払いできるほどの資産を持っていない場合、頑なに一括払いに固執すると、交渉そのものが決裂してしまうおそれがあります。裁判を起こして勝訴判決を得たとしても、相手に財産がなければ強制執行を行っても回収できない「回収不能」の状態に陥るリスクもあります。

分割払いを認めることで、相手の毎月の収入に応じた現実的な支払い計画を立てやすくなります。全額を諦めるのではなく、時間をかけてでも確実に慰謝料を回収するための現実的な選択肢として、分割払いは有効な手段となり得ます。

途中で不払いや連絡不通になる長期的リスク

一方で、分割払いは支払いが完済するまでに数か月から数年という長い期間を要します。期間が長引くほど、相手の環境変化によるリスクが高まる点には十分な注意が必要です。

例えば、相手の転職による収入減少、引っ越し、結婚や再婚といった生活環境の変化により、途中で支払いが滞ったり、連絡が取れなくなったりするケースが珍しくありません。また、時間が経つにつれて加害者側の反省の意が薄れ、「もう支払いたくない」という感情から開き直ってしまう精神的なリスクも抱えることになります。

支払額・期日・振込方法を具体的に決める

分割払いで合意する際は、お互いの認識にズレが生じないよう、条件を極めて具体的に数値化して定める必要があります。不確定な要素を残したまま口頭で約束してしまうと、後々のトラブルに直結します。

完済までの期間と現実的な月々の支払額

毎月の支払額を設定する際は、相手の収入や月々の生活費を踏まえ、支払いを無理なく継続できる現実的な金額に設定することが重要です。請求する側としては早期完済を望むあまり高額な月額を提示したくなりますが、生活を圧迫する金額を設定すると、最初の数か月で滞納が発生しやすくなります。

一般的な支払期間の目安としては、1年から長くても3年以内に完済できる計画を組むのが望ましいでしょう。また、手元にある程度のまとまった現金がある場合は、初回に「頭金」として一定額を支払わせ、残額を月々の分割にする方法も有効です。

支払期日と振込先・手数料の負担区分

支払期日は「毎月末日までに」や「毎月25日までに」といったように、カレンダー上で明確に特定できる日付を指定します。「毎月上旬」などの曖昧な表記は避けましょう。

また、振込先の口座情報(金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義)を合意書に正しく明記するとともに、振込手数料は「債務者(支払う側)の負担とする」旨を必ず条件に含めます。振込手数料の負担があやふやだと、毎月の振り込みのたびに少額の過不足が発生し、トラブルの原因になります。

滞納や期限の利益喪失を合意書に定める

分割払いを途中で破綻させないためには、万が一支払いが遅れた場合のペナルティやルールをあらかじめ合意書(示談書)へ明記しておくことが不可欠です。

一度でも遅れた場合に残額を一括請求できる「期限の利益喪失」

分割払いにおいて最も重要な取り決めが「期限の利益喪失(きげんのりえきそうしつ)」条項です。本来、債務者は「約束された期日までは分割で支払えばよい」という期限の利益(権利)を持っています。

しかし、滞納が発生した際に「支払いが〇日以上遅れた場合」や「連続して〇回以上不払いがあった場合」には、この期限の利益を失い、残りの慰謝料全額を直ちに一括で支払わなければならないという特約を設けます。この条項があることで、相手に対して「遅れずに支払わなければならない」という強い心理的プレッシャーを与えることができます。

遅延損害金の取り決めと接触禁止条項との兼ね合い

支払期日に遅れた場合のアプローチとして、遅れた期間に応じて発生する「遅延損害金(遅延利息)」の割合も定めておきます。法定利率または当事者間で定めた約定利率を適用することで、滞納への牽制になります。

なお、不倫相手との間で合意を結ぶ場合、将来的なトラブルを防ぐために「今後一切の接触や連絡を禁止する」という接触禁止条項を入れるのが一般的です。ただし、慰謝料の支払いや振込確認に関する連絡まで完全に遮断してしまうと、滞納時の状況確認が難しくなります。「支払手続きに関する連絡以外の私的な接触を禁止する」といった形で、必要な事務連絡の余地を残しておく工夫が求められます。

支払いを確保するために公正証書を検討する

どれほど緻密な合意書を作成しても、相手が支払いを拒んだ場合に当事者同士で作成した書面(私文書)だけでは、即座に相手の財産を差し押さえることはできません。確実に回収するためには「公正証書」の活用が非常に強力な選択肢となります。

私文書(示談書・合意書)と強制執行認諾バーツ付き公正証書の違い

当事者間で署名・押印した示談書や合意書は私文書と呼ばれます。私文書で分割払いを約束していた相手が支払いを止めた場合、差し押さえを行うためには、まず裁判を起こして勝訴判決や和解調書を得る必要があります。これには多くの時間と弁護士費用がかかります。

一方で、公証役場の公証人が作成する「強制執行認諾約款(きょうせいしっこうにんだくやっかん)付き公正証書」を作成しておけば、裁判を経ることなく、滞納が発生した時点で即座に相手の給与や預金口座を差し押さえることが可能になります。

公正証書を作成する手続きの流れと費用負担

公正証書を作成するには、当事者間で合意した条件案を作成し、公証役場へ事前相談を行います。公証人が文案を作成した後、当事者双方が公証役場へ出向いて、文案を確認のうえ署名・押印します。

作成にあたっては公証人手数料が発生しますが、これは請求額に応じて決定されます。この費用をどちらが負担するかも合意書作成前に話し合っておく必要があります。通常は、不倫の原因を作った加害者側に全額負担させるか、折半とするケースが多く見られます。相手が公正証書の作成を拒絶する場合は、隠された事情や支払意思の低さが疑われるため、交渉の進め方を再考する判断材料にもなります。

まとめ

不倫慰謝料の分割払いは、一括支払いが困難な相手から確実に慰謝料を回収するための有効な選択肢です。しかし、完済までに長期間を要する分、途中で支払いが滞るリスクを考慮した万全の対策が求められます。

条件を決める際は、毎月の支払額や期日、振込手数料の負担者をあいまいになさず、具体的に書面へ落とし込みましょう。さらに、滞納時に残額を一括請求できる「期限の利益喪失条項」や遅延損害金を定め、可能な限り「強制執行認諾付き公正証書」を作成することが、途中で泣き寝入りしないための確実な備えとなります。

感情的になりやすい交渉だからこそ、法的な効力を持つ手続きを整え、ご自身にとって納得のいく解決を目指してください。

参考情報

  • 日本公証人連合会(公証役場・公正証書作成に関する案内)
  • 裁判所(民事執行・差し押さえ手続きに関する案内)
  • 法テラス(日本司法支援センター)

注意事項

※この記事は一般的な法制および裁判例の動向に関する情報を提供するものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。具体的な慰謝料の分割交渉や合意書の作成にあたっては、個別の事情により適切な対応が異なるため、弁護士などの専門家へご相談ください。

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この記事を書いた人

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