パートナーからの言葉や態度、身体的な暴力に悩み、専門窓口への相談を考えながらも、電話口で何を聞かれるのか分からず躊躇してしまう方は少なくありません。「うまく説明できないかもしれない」「大げさだと思われたらどうしよう」といった不安を抱えるのはとても自然なことです。
DV相談の電話では、相談者を責めたり、証拠の提出を厳しく求めたりすることはありません。相談員が最初に確認するのは、今その場所に危険がないかという安全状況です。そのうえで、置かれている状況や、今どのような手助けを求めているのかを一つずつ整理していきます。
この記事では、DV相談窓口で聞かれる主な質問内容と、事前に確認しておくと安心な事柄について解説します。話がまとまっていなくても電話をかけてよい理由を知り、ご自身とお子さんの安全を守る選択肢を見つける手掛かりにしてください。
DV相談の電話で最初に確認される安全状況
DV相談窓口に電話がつながると、一般的な悩み相談とは異なり、まず現在の安全確保に関する確認から始まります。
今いる場所の安全と相手の居場所
相談員が最初に確認するのは、「今、パートナーが近くにいないか」「安全に話せる場所にいるか」という点です。通話中に相手が突然帰宅したり、近くで会話を聞かれたりすると、相談者自身の安全が脅かされる危険があるためです。
もし相手が同じ家の中にいる場合や、近くにいて声を聞かれる恐れがある場合は、その旨を短く伝えて通話を切るか、安全な場所に移動してからかけ直すことが勧められます。緊急の危険が迫っている状況であれば、相談ではなく警察への通報(110番)を促されることもあります。
通話を続けられる時間の確認
安全な場所にいることが分かると、次に「どのくらい通話できる時間があるか」を尋ねられることが一般的です。相手が外出先から戻る予定時間や、ご自身がお子さんを迎えに行く時間などを確認し、その制限時間の中でどのような話を進めるかを相談員が判断します。
時間が限られている場合でも焦る必要はありません。限られた時間の中で最も急を要する確認事項に絞って話を進めるなど、状況に応じた対応を取ってもらえます。
暴力の内容・頻度・子どもの有無をまとめる
現在の安全が確認できた後は、日常の中で起きている具体的な出来事について質問を受けます。
身体的暴力や言葉・態度による支配
相談員からは、どのような言動を受けているのかを尋ねられます。殴る・蹴るといった身体的な暴力だけでなく、大声で怒鳴る、人格を否定する暴言を浴びせる、長期間無視を続けるといった精神的なモラハラも重要な相談内容です。生活費を渡さない経済的な制限や、知人・家族との連絡を断たせる行動制限についても確認されます。
正確な日付や回数を覚えていなくても問題ありません。「週に数回怒鳴られる」「日常的に生活費を制限されている」など、普段の暮らしで感じている負担や恐怖の度合いをそのまま伝えていきます。
お子さんが置かれている状況と同伴の有無
同居しているお子さんがいる場合、お子さんの年齢や人数、暴力の場面に居合わせているかどうかが確認されます。子どもが直接暴力を受けていなくても、親が暴言や暴力を受けている様子を見聞きすること(面前DV)は、子どもの心に強い緊張と影響を与えるためです。
また、今後の避難や生活の立て直しを検討する際にお子さんを連れて行く必要があるかどうかも、支援の内容を決める上で大切な情報となります。
記録やメモがある場合の伝え方
もし日記やスマートフォンのメモ、怪我の写真、受診した記録などを残していれば、その存在を伝えると状況の把握がより円滑に進みます。手元に記録がなくても相談自体に支障はありませんが、客観的な事実を整理する助けになります。
相手に見つかる危険を冒してまで証拠を探したりまとめたりする必要はありません。すでに手元にある情報や、頭の中で覚えている範囲の事実を話すだけで十分です。
相談で求める支援を言葉にしておく
相談窓口では、事実関係の聞き取りと並行して、相談者自身が今何を必要としているのかという希望を確認されます。
今すぐ避難したいか・話を聞いてほしいか
相談の目的は人によってさまざまです。「今夜泊まる場所がなくて困っている」「命の危険を感じていて今すぐ家を出たい」という緊急の避難を求める場合もあれば、「誰かに今の苦しさを聞いてほしい」「自分が受けている扱いがDVなのか判断がつかない」という段階の場合もあります。
電話口で「すぐに家を出る決断」を迫られることはありません。現状の気持ちを整理したいだけなのか、避難を現実的に考え始めているのか、ご自身の素直な希望を伝えて構いません。
法律相談や生活支援など専門機関への連携希望
相談の内容に応じて、関係する専門窓口への案内や連携が行われます。離婚調停や保護命令を検討している場合の法律相談、別居後の生活費や住まいの確保に関する福祉窓口、心身の不調に関する医療機関など、相談者の状況に応じた選択肢が提示されます。
どのような制度が利用できるか分からなくても、「離婚後の生活が不安」「相手からの接触を止めたい」といった困りごとを伝えることで、適切な支援先へ案内してもらえます。
うまく話せなくても相談を中断しなくてよい
初めて相談電話をかけるときは、緊張や不安から思うように言葉が出てこないことも珍しくありません。
感情があふれたり記憶が曖昧だったりしても大丈夫
電話の途中で涙が出て言葉に詰まったり、時系列が前後してしまったりしても、相談を遠慮したり中断したりする必要はありません。DVやモラハラの被害を受けているときは、強い緊張状態が続いているため、出来事を順序立てて思い出すのが難しくなるのはごく自然な反応です。
相談員はそうした心理状態に配慮しながら話を聞く訓練を受けています。沈黙してしまっても、ゆっくりと呼吸を整えながら話せる部分から伝えていけば大丈夫です。
相談員と一緒に状況を整理していく姿勢
相談の場は、取り調べのように完璧な説明を求められる場所ではありません。相談員からの質問に一つずつ答えていくうちに、自分でも気づいていなかった問題点や、優先して対処すべき課題が整理されていきます。
「上手に話そう」と構える必要はなく、相談員からの問いかけに「はい」「いいえ」や、「それは覚えていません」と答えるだけでも、現状を把握するための十分な情報になります。
途中で通話を切らざるを得なくなったときの対応
通話中にパートナーが急に戻ってきたり、物音がして危険を感じたりした場合は、相談員の了解を取らずにその場で電話を切ってしまっても問題ありません。安全確保が最優先です。
後から時間が取れた際に再度電話をかけ、「先ほど途中で切ってしまった」と伝えれば、再び安全を確認した上で相談を再開できます。
まとめ
DV相談窓口への電話は、ご自身やお子さんの安全を守るための大切な一歩です。電話ではまず現在の安全が確認され、その後に暴力の内容や頻度、お子さんの状況、そして今どのような支援を求めているのかが丁寧に聞き取られます。
事前にすべての出来事を完璧に整理しておく必要はありません。話がまとまっていなくても、感情があふれてしまっても、相談員が一つずつ質問を重ねながら現状の整理を手伝ってくれます。
危険を感じたときや、日々の関係性に耐え難い苦しさを覚えたときは、一人で抱え込まずに公的な相談窓口を利用してください。今すぐ決断を下すためではなく、ご自身が安心して暮らすための選択肢を知るために、専門の力を借りることが可能です。
参考情報
内閣府男女共同参画局「DV相談ナビ・DV相談+(プラス)」
警察庁「警察に対する相談窓口」
裁判所「配偶者からの暴力に関する保護命令申立て」
注意事項
この記事は、DVやモラハラに悩む方へ向けた一般的な情報提供を目的として作成されています。具体的な危険が差し迫っている場合は直ちに110番通報を行うか、お近くの配偶者暴力相談支援センターや警察などの公的機関へご相談ください。状況や自治体の支援体制によって利用できる制度や手続きの流れは異なります。


