配偶者からの暴力やモラハラに苦しんでいても、「公的な相談機関に連絡すると、どのような対応をされるのだろう」「相談したら大事になって、すぐに家を出なければならなくなるのではないか」と不安を抱く方は少なくありません。先の展開が見通せないこと自体が、相談への大きな心理的ハードルになります。
配偶者暴力相談支援センターは、被害を受けた方を無理に行動させたり、一方的に決断を迫ったりする場所ではありません。相談者の安全を最優先に考えながら、置かれている状況を整理し、必要な支援の選択肢を提示する公的な相談機関です。
この記事では、配偶者暴力相談支援センターで受けられる支援の内容や、相談から安全確保・専門機関への連携に至るまでの具体的な流れについて解説します。相談したからといって離婚を強制されるわけではない理由を知り、ご自身の心と生活を守るための第一歩として役立ててください。
配偶者暴力相談支援センターで受けられる支援
配偶者暴力相談支援センター(配暴センター)は、配偶者からの暴力防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)に基づき、各都道府県や市区町村に設置されている公的施設です。身体的暴力だけでなく、暴言などの精神的暴力や生活費を渡さない経済的暴力にも対応しています。
相談対応と心身の健康回復支援
センターでは、専門の相談員が電話や面接を通じて被害の状況を詳しく聞き取ります。暴力や支配を受けている最中は、恐怖や混乱から自分の置かれている状況を客観的に把握することが難しくなりがちです。相談員は出来事を丁寧に整理し、どのような危険が存在するのかを一緒に確認します。
また、長期間にわたる暴力やモラハラによって傷ついた心身をケアするため、心理カウンセリングや専門の医療機関に関する情報提供も行われます。
一時保護と安全な居場所の確保
配偶者からの直接的な危害が差し迫っている場合や、身の安全を確保するために避難が必要な場合には、一時保護の手続きが進められます。一時保護は、女性相談支援センターなどの公的シェルターや委託を受けた民間シェルターを活用して行われます。
シェルターの所在地や連絡先は厳重に秘匿されており、加害者が居場所を突き止めることはできません。同伴するお子さんと一緒に安全な環境へ身を寄せ、これからの生活を落ち着いて考えるための時間を確保できます。
自立に向けた情報提供と生活再建支援
被害者が加害者から離れて新しい生活を始めるための総合的な自立支援も担当しています。住まいの確保や就労に関する相談、各種手当の案内など、生活を立て直すために必要な公的制度の利用を後押しします。
単に危険から逃げるだけでなく、避難した後の生活基盤をどのように整えていくかまで見据えた継続的なサポートを受けることが可能です。
相談から安全確認・避難支援までの一般的な流れ
センターへの相談は、相談者の安全確認から始まり、危険度に応じた段階的な支援へと進んでいきます。
電話や面談による状況のヒアリング
最初の接点は、電話相談または予約制の面談相談から始まります。相談員はまず、今その瞬間に危険がないか、加害者に聞かれる心配のない安全な場所から連絡しているかを確認します。
そのうえで、どのような暴力や支配を受けているのか、頻度や期間、お子さんの有無や怪我の状況などを聞き取ります。話が整理されていなくても、相談員の質問に答えていく形で進められるため、構える必要はありません。
危険度に応じた安全確保計画の策定
聞き取った内容をもとに、現在どの程度の危険が迫っているかを評価します。急迫した危険がない場合でも、今後の緊急事態に備えて「安全確保計画」を一緒に考えます。
危険が高まったときの避難先、緊急連絡先、持ち出すべき重要書類や最低限の所持品などを事前に確認しておくことで、いざというときに迅速に行動できるよう準備を整えます。
緊急避難が必要な場合の具体的な手順
強い暴力の危険があり自宅にとどまることが極めて危険と判断された場合は、速やかに一時保護へ向けた手続きが取られます。警察と連携して加害者との接触を遮断しながら、安全な移動経路を確保して保護施設へ案内されます。
避難の際には、加害者に気づかれないよう細心の注意を払いながら、身分証明書や健康保険証、通帳などの必要書類の持ち出しについても指示を受けられます。
法律・福祉・医療につないでもらう方法
配偶者暴力相談支援センターは、地域のさまざまな関係機関と連携するハブとしての役割を持っています。個別の問題に応じて適切な窓口へつないでもらうことができます。
保護命令の申立てや弁護士窓口への連携
加害者がつきまといや接近をしてくる恐れがある場合、裁判所に対して「保護命令」(接近禁止命令や退去命令など)を申し立てることができます。センターに相談した記録は、保護命令の申立て要件を満たす重要な証拠として扱われます。
法的手続きや離婚交渉を弁護士に依頼したい場合は、法テラス(日本司法支援センター)などの無料法律相談や専門の弁護士窓口を紹介してもらえます。
生活保護や住居確保など福祉窓口との連携
別居や避難に伴い生活費が不足する場合は、自治体の福祉担当部署と連携して生活保護の申請や各種手当の手続きが進められます。住民票の閲覧制限手続き(加害者に新住所を知られないための支援措置)についても、センターが証明書を発行することで円滑に申請できます。
また、公営住宅への優先入居や民間賃貸住宅の確保など、住まいに関する手続きも福祉窓口と協力しながら案内されます。
診断書の取得やメンタルケアに関する医療連携
身体的な怪我がある場合や、精神的なストレスから不眠・不安などの症状が出ている場合は、適切な医療機関の受診を勧められます。医師に怪我の状況や症状を正確に伝え、将来の法的手続きに備えて診断書を作成してもらうための助言も受けられます。
必要に応じて、精神保健福祉センターやトラウマケアを専門とする医療機関への紹介が行われます。
相談しただけで離婚を強制されるわけではない
公的機関に相談することに対して「一度相談したら、もう元には戻れなくなるのではないか」「すぐに離婚を迫られるのではないか」という懸念を持つ方は少なくありません。
相談者の意思が尊重される基本原則
センターの支援は、相談者本人の自己決定を尊重することが大前提となっています。相談員が「今すぐ離婚しなさい」「必ず家を出るべきだ」と一方的に指示したり、無理に行動を強制したりすることはありません。
相談者が今後どうしたいのか、何に一番不安を感じているのかを丁寧に聞き取りながら、本人が納得できる選択肢を一緒に探していきます。
気持ちを整理するだけの相談も認められている
「自分が受けている扱いがモラハラやDVに当たるのか知りたい」「誰にも言えなかった苦しさを聞いてほしい」という段階での利用も全く問題ありません。
具体的な手続きや避難を考えていなくても、現状の危険性を確認し、気持ちを整理するための場として相談窓口を活用することができます。
今後の選択肢を自分のペースで選ぶために
夫婦関係をどのように見直すか、あるいは距離を置くかは、安全が確保された状態の中で時間をかけて考えていく事柄です。配偶者暴力相談支援センターは、危険から身を守るための安全基地であり、情報を集めるための窓口です。
一人で悩みを抱え込まず、どのような選択肢や公的支援が存在するのかを知るために、専門機関の力を借りることが大切です。
まとめ
配偶者暴力相談支援センターは、DVやモラハラに悩む方が安全を確保し、生活を立て直すための公的な専門機関です。相談窓口では、状況の聞き取りから危険度の確認、一時保護や自立支援、さらには法律・福祉・医療機関への連携まで包括的な支援を受けることができます。
相談したからといって、すぐに離婚や避難を強制されることはありません。相談者の意思が何よりも尊重され、まずは安全を確保したうえで今後の生活を考えるための選択肢が提示されます。
関係性の中で苦しさや恐怖を感じている場合は、決して一人で抱え込まず、公的な相談窓口へ連絡してみてください。客観的な状況整理と専門機関の支援を得ることが、自分とお子さんの安全を守る確かな一歩につながります。
参考情報
内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力被害者支援情報」
裁判所「配偶者からの暴力に関する保護命令申立て」
法テラス(日本司法支援センター)「DV・ストーカー・児童虐待等被害者支援」
注意事項
この記事は、配偶者からの暴力やモラハラに悩む方に向けた一般的な情報提供を目的として作成されています。具体的な支援内容や一時保護の手続きは、自治体や施設の状況によって異なる場合があります。生命や身体に危険が迫っている緊急時は、直ちに110番通報を行ってください。


