DV保護命令を申し立てるには?必要書類と手続きの流れを整理

裁判所での手続きを決意し、屋外の道で静かに前を見つめる女性を描いたモノクロ線画イラスト

配偶者からの暴力や脅迫に直面し、身の危険を感じているとき、裁判所が加害者に対して接近や連絡を禁じる「DV保護命令」は、安全を確保するための重要な法的手段です。

しかし、どのような行為があれば申し立てられるのか、どのような書類や事前準備が必要なのかが分からず、手続きに踏み出すことをためらってしまう方も少なくありません。

DV保護命令は、申立ての要件や事前の相談実績、提出書類を正しく把握しておくことで、迅速に安全を確保できる可能性が高まります。

この記事では、DV保護命令の対象となる行為や申立ての条件、事前に準備すべき相談記録や証拠、裁判所での手続きの流れから発令後の安全対策までを順を追って整理しました。ご自身とお子さんの命と心を守るための現実的な選択肢としてお役立てください。

目次

DV保護命令の対象になる行為と申立ての条件

保護命令は、裁判所が加害者に対して法的拘束力を持つ禁止事項を命じる制度です。申立てが認められるためには、配偶者暴力防止法(DV防止法)に定められた要件を満たしている必要があります。

身体的暴力と生命・身体に対する脅迫

保護命令の基本的な対象となるのは、配偶者から受けた殴る・蹴る・物を投げつけるといった「身体に対する暴力」や、「次はお前を殺す」「ひどい目に遭わせる」といった「生命・身体に対する脅迫」です。

過去にこうした暴力や脅迫を受け、今後も更なる重大な危害を受ける高度なおそれ(危険性)があると認められる場合に発令されます。

法律上の夫婦だけでなく、事実婚関係にあるパートナーや、同居中・別居直後の交際相手(いわゆるデートDV)からの被害に対しても準用されます。

法改正による精神的DVや脅迫への対象拡大

法改正により、身体に対する暴力だけでなく、自由・名誉・財産に対する重篤な脅迫(「実家に火をつける」「職場に悪質な噂を流す」「全財産を奪う」など)を受けた場合も保護命令の対象に含まれるようになりました。

さらに、言葉や態度による執拗な支配(精神的DV)によって心身に重大な危害を受け、医師からPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの診断が出ているような深刻なケースでも、保護命令の申立てが認められる範囲が広がっています。

身体的な傷跡が残っていない場合であっても、精神的な支配や脅迫によって命や心身が脅かされているときは、保護命令の利用を検討することができます。

保護命令の種類と申立ての要件

保護命令にはいくつかの種類があり、被害者の置かれている状況に合わせて組み合わせて申し立てます。

主なものとして、被害者の身の回りへのつきまといや自宅・勤務先付近の徘徊を禁じる「被害者への接近禁止命令(原則1年間)」や、同居している住居から加害者を一定期間退去させる「退去命令(原則2か月間)」があります。

また、面会の強要や無言電話、連続したメール・SNS送信を禁じる「電話等禁止命令」、さらには子どもや親族への危害を防ぐための「子への接近禁止命令」「親族等への接近禁止命令」などを同時に申し立てることも可能です。

申立て前の相談と証拠の準備

裁判所へ保護命令を申し立てるにあたっては、事前に公的機関へ相談していること、または公証人の前で事実関係を誓約していることが法律上の要件とされています。安全を最優先にしながら、着実に準備を整えることが大切です。

警察や配偶者暴力相談支援センターへの事前相談

保護命令を申し立てる前には、最寄りの警察署(生活安全課など)や、配偶者暴力相談支援センター(婦人相談所や自治体の担当窓口)へ相談に訪れることが原則として求められます。

窓口では、これまでに受けた暴力や脅迫の内容、現在の避難状況や恐れている危険について具体的に伝えてください。申立書には「いつ、どこの機関の、誰に相談したか」を記載する必要があり、公的機関に相談記録が残されていることで、裁判所の手続きも迅速に進みやすくなります。

どうしても公的機関への相談が難しい事情がある場合は、公証役場で「宣誓供述書」を作成して提出する方法もありますが、緊急時の警察対応を円滑にするためにも、事前の警察相談を行っておくことが推奨されます。

申立てを裏付ける証拠の集め方

裁判官に暴力の事実や更なる危険性を納得してもらうためには、客観的な証拠資料の提出が重要になります。

身体的暴力がある場合は、医師が作成した診断書(受診理由に配偶者からの暴力と明記してもらうことが望ましいです)や、怪我をした部位の写真、破壊された家具や衣服の写真が有力な証拠となります。

暴言や脅迫については、メッセージの画面キャプチャ、留守番電話の録音、送信されてきた手紙などが有効です。また、いつ・どこで・どのような暴力を受けたのかを時系列で詳細に書き留めた日記やメモも、信用性の高い証拠として扱われます。

ただし、証拠を集めるために危険な自宅へ無理に戻ったり、相手を問い詰めて刺激したりすることは避けてください。すでに手元にある記録を整理し、足りない部分は陳述書で補う進め方を支援機関と相談することが安全です。

裁判所へ提出する書類と審理の流れ

保護命令の申立ては、相手方の住所地または申立人の住所地・居所を管轄する地方裁判所に対して行います。被害者の安全を守るため、通常の手続きよりも極めて迅速に審理が進められます。

裁判所へ提出する必要書類

申立てにあたっては、裁判所所定の「保護命令申立書」を作成します。申立書には、当事者の情報、申立ての趣旨(どの命令を求めるか)、暴力や脅迫の具体的事実、事前相談の経緯などを記載します。

これに加えて、以下の書類を添付して提出します。

  • 申立人の陳述書(暴力の経緯や現在の恐怖を時系列でまとめた書面)
  • 夫婦関係や親子関係を証明する戸籍謄本、住民票
  • 暴力や脅迫を証明する証拠書類(診断書、写真、メッセージの写しなど)
  • 相手方に現在の居場所を知られないようにするための秘匿申出書(避難先の住所を伏せる手続き)

書類の作成に不安がある場合は、弁護士へ依頼するか、法テラスのDV被害者法律援助制度を利用して作成をサポートしてもらうことができます。

即日面接と相手方の審問期日

書類を裁判所に提出すると、通常は申立ての当日または数日以内に、裁判官による申立人への面接(審尋・口頭弁論)が行われます。この面接では、申立書の内容に間違いがないか、危険が差し迫っているかなどが直接確認されます。

その後、裁判所は相手方(加害者)の言い分を聞くための期日を指定します。

申立人が裁判所へ出頭する際、加害者と鉢合わせして危険が生じないよう、裁判所側では待合室を別フロアにする、出頭時間をずらす、別ルートで案内するなど厳重な安全配慮が行われます。なお、相手方が正当な理由なく期日に現れなかった場合でも、審理が進められて発令に至ることがあります。

保護命令の発令と相手方への送達

裁判官が申立ての理由を正当と認めた場合、保護命令が発令されます。

発令された決定書は裁判所から相手方へ特別送達(郵便による送達)され、相手方に届いた時点、または法廷で言い渡された時点で直ちに法的効力が発生します。

同時に、裁判所から管轄の警察署長へも保護命令が発令された旨が速やかに通知され、地域全体で被害者を保護するための連携体制が整えられます。

命令後の違反や安全対策を確認する

保護命令が出されたからといって、完全に危険がなくなったわけではありません。命令の法的効力を正しく理解し、万が一の違反に備えた安全対策を維持し続けることが必要です。

保護命令違反に対する罰則と警察への通報

保護命令に違反して被害者に近づいたり、禁止されている連絡を取ったりした場合、加害者には「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」という重い刑事罰が科されます。

もし相手方が自宅や職場の周辺をうろついているのを見かけたり、電話やメッセージが届いたりした場合は、相手に直接返信や対応をしてはいけません。直ちに110番通報を行い、保護命令が出ている旨と違反行為の状況を警察官に伝えてください。警察は違反事件として速やかに捜査や現行犯逮捕などの措置を取ることができます。

住民票の閲覧制限と居場所の秘匿

保護命令の決定書の写しを取得したら、避難先の自治体窓口へ提出し、「住民票等の閲覧制限措置(DV等支援措置)」を申請・継続します。

この手続きを行うことで、加害者本人が住民票や戸籍の附票を取得して新住所を突き止めることを防ぐことができます。

あわせて、郵便物の転送手続き、子どもの学校や保育園への情報共有、勤務先への不審者警戒依頼など、日常生活における情報管理を徹底してください。

避難生活と生活再建に向けた継続的支援

保護命令の有効期間(接近禁止命令であれば原則1年間)は、加害者からの直接の接触を遮断しながら、その後の生活を立て直すための貴重な猶予期間です。

この期間を利用して、弁護士を代理人に立てて離婚調停や婚姻費用(生活費)の請求を進めたり、安全な住居の確保や就労の準備を行ったりします。相手方と直接顔を合わせる交渉は避け、必ず第三者や司法の場を介して進めることが鉄則です。

配偶者暴力相談支援センターや自治体の福祉担当課とつながりを保ち、利用できる支援制度を活用しながら、一歩ずつ安心できる生活基盤を整えていきましょう。

まとめ

DV保護命令は、配偶者からの暴力や深刻な脅迫から身を守るために、裁判所を通じて迅速に接近や連絡を禁止させる法的手続きです。

申立てを検討する際は、まずご自身とお子さんの安全を最優先に確保したうえで、警察や配偶者暴力相談支援センターへ相談して記録を残すことから始めてください。医師の診断書や被害の記録など、手元にある証拠を整理し、裁判所に危険の差し迫った状況を伝えることが重要です。

命令が発令された後も油断せず、住民票の閲覧制限や警察との連携を保ちながら、弁護士や支援機関とともに生活の再建を進めていきましょう。

参考情報

  • 裁判所「配偶者からの暴力に関する保護命令申立て」
  • 内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力被害者支援情報」
  • 警察庁「配偶者からの暴力等に対する対応」
  • 法テラス(日本司法支援センター)「DV・ストーカー被害者支援」

【注意事項】
この記事は、配偶者暴力防止法に基づく保護命令手続きに関する一般的な情報を提供するものであり、個別の事案に対する法的な助言や判断を行うものではありません。配偶者や交際相手からの暴力・脅迫により生命や身体に危険が迫っている場合は、直ちに警察(110番または警察相談専用電話#9110)や配偶者暴力相談支援センターなどの公的機関、または弁護士へご相談ください。裁判所の手続きや運用の詳細は、個別の状況や管轄の裁判所によって異なる場合があります。

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この記事を書いた人

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