DVから避難しても財産分与はできる?別居前に確認したいお金と書類

避難準備を進める女性が、机上のお金や重要書類を前に静かに今後の生活を考える様子

配偶者からの暴力や過度な支配(DV・モラハラ)に耐えかね、家を出て避難することを考えているとき、「着の身着のままで逃げ出したら、これまで築いてきた夫婦の財産は諦めるしかないのだろうか」「勝手に家を出るとお金を一切請求できなくなるのでは」と不安に思う方は少なくありません。

しかし、自分の身の安全を守るために避難することと、婚姻期間中に協力して築いた財産を分け合う「財産分与の権利」を放棄することは全く別問題です。着の身着のままで避難した場合であっても、法的な財産分与の権利が消滅することはありません。

この記事では、避難と財産分与の権利関係を整理したうえで、別居前に安全な範囲で確認・把握しておきたい財産と書類、経済的DVによって相手が資産を隠している場合の対処法、そして離婚成立までの生活を支える婚姻費用や支援制度について詳しく解説します。安全を最優先にしながら、離婚後の新しい生活を立て直すための知識としてお役立てください。

目次

避難したから財産を放棄したことにはならない

配偶者の暴力を逃れるために突発的あるいは計画的に家を出る際、「自分から出て行ったのだから財産は一銭ももらえないのではないか」と思い込んでしまうケースがあります。しかし、法律上の財産分与と避難の事実は切り離して考える必要があります。

安全確保と財産分与を分けて考える

法律上の「財産分与」とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた実質的な共有財産を、離婚に伴って清算・分配する制度です。

婚姻生活の維持が困難であり、特に身体的・精神的な安全を脅かされるDVやモラハラの状況下で避難を余儀なくされた場合、家を出たという行為は自衛のための正当な行動であり、「財産を放棄した」ことには一切なりません。有責配偶者(加害者)であれ被害者であれ、あるいはどちらから家を出たかに関わらず、共有財産の形成に対する貢献度(原則として2分の1)に基づいて請求する権利が認められています。

荷物を取りに戻る危険を避ける

避難後に「権利書類や通帳を置いてきてしまった」「相手の財産状況を示す書類を回収し忘れた」と気づき、慌てて一人で自宅へ荷物を取りに戻ることは非常に危険です。

家を出たことで激怒している加害者と鉢合わせしたり、待ち伏せされたりすると、さらなる暴力や監禁、連れ戻しの被害に遭うおそれがあります。一度避難した後は、いかなる理由があっても一人で自宅に戻ってはなりません。手元に書類や資料がない場合でも、弁護士の代理交渉や家庭裁判所の開示手続き(弁護士照会や文書提出命令など)を通じて財産情報を把握する方法が存在します。まずは身の安全の維持を最優先にしてください。

別居前に把握したい夫婦の財産

避難前に多少の猶予や計画を立てられる状況であれば、夫婦の共有財産が「どこに・どれだけあるのか」を事前に把握し、記録に残しておくことで、避難後の財産分与の話し合いや調停を大幅に有利かつスムーズに進めることができます。

預貯金・保険・不動産

夫婦が婚姻後に形成した財産は、名義が夫(または妻)のどちらになっていても、原則としてすべて財産分与の対象(名義にかかわらない共有財産)となります。

具体的には、銀行の口座名義、金融機関名、支店名、口座番号が分かるもの(通帳の表紙や記帳ページ、ネットバンキングの画面のスマートフォンでの撮影等)を記録します。生命保険や学資保険については保険会社名や証券番号、積立型保険の解約返戻金の見積もりなどが確認対象です。不動産(自宅や所有土地)がある場合は、権利証(登記識別情報)の写しや固定資産税の納税通知書、購入時の契約書などを確認しておきます。

借入金・住宅ローン

財産分与では、預貯金などのプラスの資産だけでなく、住宅ローンや借入金などの「マイナスの資産(負債)」も考慮して全体の清算が行われます。

ただし、負債が財産分与の対象となるのは「夫婦の共同生活を維持するために発生した借入(住宅ローン、生活費のための借入、子どもの教育ローンなど)」に限られます。加害者が個人的なギャンブル、趣味、不倫、事業上の独断で抱えた借金はマイナスの共有財産としてはカウントされず、相手個人の負債となります。住宅ローンの残高証明書や消費者金融の契約書・明細などを確認し、何のための借金かを把握することが重要です。

相手が管理している口座

DVやモラハラの家庭では、お金の管理を加害配偶者が一手に握り、被害者には全容が見えないように隠蔽されているケースが多々あります。

相手名義のメイン口座だけでなく、日常使っていないサブ口座、ネット銀行口座、証券口座(株式・投資信託)、暗号資産の口座などの存在を示す痕跡がないか確認します。自宅に届く金融機関からの郵便物(取引明細、配当金通知、ダイレクトメール)や、カレンダーのメモ、パソコンのブックマークなどを密かにチェックし、機関名や口座の存在だけでも控えておくことが強力な手がかりとなります。

経済的DVで財産が見えない場合

配偶者が生活費を極端に切り詰めたり、自身の収入や資産を一切開示しなかったりする「経済的DV」を受けていた場合、避難の時点で夫婦の財産がいくらあるのか全く分からないという事態が生じます。このような場合でも諦める必要はありません。

生活費を渡されていなかった記録

「十分な収入があるはずなのに、毎月数万円しか生活費を入れてくれなかった」「医療費や子どもの日用品代すら出さず、細かく領収書を提出させられた」といった経済的DVの被害実態は、記録を残しておくことが大切です。

家計簿の記録、手渡された生活費の金額メモ、通帳の入金履歴、買い物領収書などを残しておくことで、相手が意図的に生活費を制限していたことや、夫婦の収入の不均衡を証明できます。これは離婚交渉における相手の有責性を示す証拠になるだけでなく、後述する「婚姻費用」の未払い分の過去清算や、財産分与の割合交渉において考慮される要素となります。

収入や資産を隠されていた事情

相手が頑なに収入証明(源泉徴収票や確定申告書)や資産情報を隠している場合、個人でこれらを強制的に聞き出すことは不可能です。

しかし、裁判所の離婚調停や訴訟の手続きへ移行すれば、法的な照会手続きを利用することができます。弁護士を通じて行う「弁護士会照会(23条照会)」や、裁判所による「調査嘱託」「文書提出命令」などの制度を活用することで、金融機関や勤務先、税務署等に対して口座残高や給与収入の開示を求めることが可能です。相手が情報を隠していても、法的手続きによって実態をあぶり出すことができるため、相手の「教えない」という不誠実な態度に屈する必要はありません。

離婚後の生活資金を確保する

避難を開始してから離婚が成立するまで、あるいは財産分与の金銭が実際に支払われるまでには数ヶ月から1年以上かかることがあります。その間の生活費を確保し、安心して手続きを進めるための選択肢や支援制度を理解しておく必要があります。

婚姻費用という選択肢

避難後、離婚が成立するまでの期間に相手に対して請求できるのが「婚姻費用(こんいんひよう)」です。

婚姻費用とは、夫婦がその資産や収入に応じて分担すべき生活費(住居費、食費、医療費、子どもの養育費・教育費等)のことを指します。別居して避難した場合であっても、婚姻関係が続いている以上、収入の多い配偶者は少ない側に対して生活費を支払う法的な義務があります。家庭裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」を基準に金額が決められ、申し立てを行った時点まで遡って請求できます。避難したら直ちに「婚姻費用分担請求調停」を家庭裁判所に申し立てることが生活資金確保の第一歩です。

支援制度と公的相談先

避難直後で相手からの婚姻費用の支払いが滞っている場合や、無収入で避難した場合は、行政の公的支援や制度をフル活用することが不可欠です。

配偶者暴力相談支援センターや自治体の福祉課などに相談することで、一時保護(シェルター)の利用、生活保護の受給、母子父子寡婦福祉資金貸付金、児童手当の受給者変更手続きなどの支援を受けられます。また、DV被害者の場合、DV防止法に基づく保護命令や住民票の閲覧制限措置を行うことで、相手からの追跡を遮断しながら、安全に公的手続きや生活支援を進めることができます。お金の面で追い詰められる前に、早めに公的窓口へ相談してください。

まとめ

DVやモラハラから逃れるために家を出ることは、決して財産を放棄することではありません。自分と子どもの生命・身体の安全を守る行為であり、婚姻期間中に協力して築いた財産を分与してもらう権利は、法的にしっかりと保護されています。

重要なのは、決して一人で危険を冒して自宅に荷物や書類を取りに戻らないことです。手元に十分な資料がない場合でも、専門家や家庭裁判所の手続きを通じて相手の資産を調査・請求することができます。また、離婚成立までの生活費を支える婚姻費用や公的支援制度を活用することで、経済的な不安を和らげながら手続きを進めることが可能です。

一人でお金や手続きの悩みを抱え込む必要はありません。警察、配偶者暴力相談支援センター、弁護士などの専門機関の力を頼りながら、安全な環境でご自身と子どもの未来のための選択肢を整えていってください。フタリエは、あなたが恐怖から解放され、自分自身の意志で新しい一歩を踏み出すことを心から応援しています。

参考情報

・裁判所「財産分与」
・裁判所「婚姻費用分担請求の調停」
・内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力被害者支援」
・法テラス「DV被害者への法的支援と財産分与」

※この記事は一般的な情報を提供するもので、個別の事情に対する法律・医療上の判断を行うものではありません。具体的な対応については、弁護士、配偶者暴力相談支援センター、警察などへご相談ください。

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安全の確保、証拠の残し方、相談先、離婚準備、慰謝料、養育費、親権、子どもへの影響、心の回復など、状況に合わせて読める記事をまとめています。

この記事を書いた人

フタリエ編集部は、不倫・浮気、托卵、DV・モラハラ、恋愛心理を中心に、恋愛・夫婦・家族の体験談と実用情報を発信しています。

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